■私たちが「本当?」という言葉を使うとき
「本当?」は、たいてい相手にむけて真実や意図など、自分が信じるための証拠がほしくて、再確認の言葉として使うことが多い。
言われた相手は「疑ってるの?」という気持ちになるし、実際「疑ってる?信じられないの?」という言葉になって返ってくる。子どもの場合も同じ。「本当だよ!」「疑ってるの?」と返してくる。こちら側としては疑っているわけでもないけれどもコミュニケーションの一つとして「本当なの?」ということもある。少なくとも「そうなんだね」という使い方とは異なるので、やはり軽い気持ちであっても、相手の発言の真意を確認するときに使っている。
特に、子どもがお友達を泣かせたかもしれない、嘘をついたかもしれない、そんなときは「本当なの?嘘じゃないよね!?」と詰め寄る。夫婦間でも同じようなコミュニケーションが行われることがある。身内であればあるほど、自分にはそれを知る権利があると思っているからかもしれない。
いずれにしても、あまり良くない関係になってしまったり、相手が悲しかったり憤りを感じたりすることがあるのが「本当?」を使った結果だ。
■「本当?」で関係が壊れないとき
「本当?」で関係が悪くなりそうなことを書いたが、同じ「本当?」がどこにむけられるかで、相手との関係が改善していくことがある。
それは自分自身だ。
■「それって本当?」と自分に問うてみる
子どもがこのように話してきた。「今日、お友達と喧嘩した。むこうから叩いてきた」思わず「本当?あなたが先に叩かれるようなことをしたんじゃないの?」と言いたくなるときもある。普段、よく喧嘩するわが子であればなおさらだ。子どもはこう答える。「違うよ!むこうから叩いてきたんだ!なんでそんなこと言うんだよ!」
でも、次のように置き換えてみてほしい。
・子:「今日、お友達と喧嘩した。むこうから叩いてきた」
・自分(心の中で):本当?あなたが先に叩かれるようなことをしたんじゃないの?
こう言う前に自分に聞いてみてほしい。「それって本当?」
(自分(心の中で):本当?あなたが先に叩かれるようなことをしたんじゃない?いや、それって本当?)
するとこのような言葉になる。
・自分:「そうなのね。向こうから叩いてきたのね」疑う余地はない。質問をすることもない。その話を受け入れる気持ちになる。
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こんなこともある。
・子:うまく字が書けない・・(という状況)
・自分:「こうやって鉛筆持てばいいの」
・子:「やめて!自分でやってるのに!」
・自分:ムカッ・・イライラ・・!!
それをこうする。
・子:うまく字が書けない・・(という状況)
・自分:(心の中で)鉛筆の持ち方変えたら書けるのに!いや、でもそれって本当にこの子のためになる?いまは自分で好きに書いてるんじゃない?私がしようとしてることって本当に親切?
するとこうなる。
・自分:「もし、必要なら声かけて。お母さん、手伝えるかもしれない」
■「それって本当?」の効果
子どもに勝手なアドバイスをしたり、疑ったりしなくて済むようになると、子ども自身が親に信頼を寄せるようになる。それは、自分が信じてもらっていると感じているからだ。
そして、困ったときに親に相談するようになることで言語化する力もつく。言語化すると思考は整理されていく。
子どもの気持ちや感情、成長を邪魔しそうになる自分自身を冷静にする言葉、「それって本当?」を自分自身に使ってみてほしい。