【本の紹介】モンテッソーリ教育(理論と実践)第7章
今日は「現代に生きるマリア・モンテッソーリの教育思想と実践」の第7章を紹介します。
◆KTC中央出版
現代に生きるマリア・モンテッソーリの教育思想と実践~空想的想像力から科学的創造力へ~
第1章 改革者としてのモンテッソーリと近年における世界のモンテッソーリ教育(早田由美子)
第2章 モンテッソーリ教育の内容・方法の概容と今日の実践が引き継ぐもの(森下京子)
第3章 モンテッソーリ教育の普及と逆境、そして発展-経験主義、ファシズムに抗し、宇宙的視野で生命を尊ぶ子らを育てる-(野原由利子)
第4章 モンテッソーリ教育における自己表現活動の特徴
1 モンテッソーリ教育における自由と自己表現活動の理論と特徴(島田美城)
2モンテッソーリ教育における音楽教育の内容・方法とその発展(藤尾かの子
3モンテッソーリの幼児の音・音楽活動の実践例-横浜・モンテッソーリ幼稚園の取り組み-(島田美城)
4モンテッソーリの美術教育の内容(奥山清子)
5モンテッソーリの幼児のアート活動の実践例(村田尚子)
第5章 モンテッソーリ障がい児教育の理論と実践-保育の中の療育-(木下めぐみ)
第6章 モンテッソーリ教育リバイバルから半世紀を経て見えてきたこと(相良敬子)
第7章 モンテッソーリ教育の遺産と課題(⬅今日のブログ)
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第7章 モンテッソーリ教育の遺産と課題
(1)モンテッソーリ教育の果たしてきた社会的教育的役割
世界110ヶ国、22000のモンテッソーリ園・校が存在している。
これは「今も様々な国や階層の子ども達の生きようとする力を手助けしている」裏付けである。
そしてモンテッソーリ教育は大別して二つのニーズにこたえてきた。
「富裕層、中産階層」と「世界の恵まれない環境に置かれている子どもたち」である。
(2)モンテッソーリ教育に対する批判の克服への取り組み
本書では、モンテッソーリ教育が強い支持を受ける一方で強い批判を受けてきたことが述べられている。その代表がキルパトリックである。
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キルパトリックへのマリア・モンテッソーリの回答
①自由な自己表現が制限されていることについて
第4章1 (4)にて、回答している。
年齢による発達においていくつかの段階があり、
自由な自己表現は前段階で獲得される基礎的能力により初めて可能になる-つまり「自由を与える時期についての解釈の違いがある」
のである。
②想像力の欠如
第4章1(5)にて回答している。
モンテッソーリ教育では年少児の基礎の上に年長児でなされる想像的・創造的で総合的な活動が用意されている
のである。
このようにモンテッソーリ教育における自由の最終目標とは、
自由を行使できる人間形成であり、
自由な自己表現の最終目標は、自己を創りあげて社会に表明することにあり、
一人の人間としての自分が大きな意味での表現である。
・モンテッソーリ教育思想の後半期の形成過程の研究の必要性
キルパトリックを代表とする諸批判と向き合うことから、科学研究成果を踏まえ再構築されたモンテッソーリ教育論。
これは後にマハトマガンジーとの出会いによりコスミック教育へと結実を見るのである。
(3)マリア・モンテッソーリの教育思想における「革新性」へのアプローチ
①マリア・モンテッソーリ自身が封建的なイタリアで女性権利獲得のために闘った。
そして働く母親のためにつくった「子どもの家」を「社会化された家庭」と位置付けた
②「子どもの家」を大人に依存せず自立した生活者として子どもが尊重される場として期待されていた
③子どもの学業成績と家庭環境の関連を調査し、家庭的・社会的要因といった環境要因が成績に関係すると指摘した。
つまり「子どもの家」は、
家庭的・社会的要因から幼児を開放し、
自立した生活の中で自由に学び、
結果より自立的で自律的な力を獲得し、
読み書きの基礎を習得し考える力を獲得しつつある子どもとして
小学校教育のスタートラインに立たせることを目標とする教育施設でもある。
さらに、
④集中現象に代表される生命現象の発見から、敏感期、吸収する精神等々、自己発達の鍵概念が導きだされる。
(4)モンテッソーリ教育における新しい研究課題
①芸術の領域
日本のモンテッソーリ教育においてはあまり知られておらず実践されてこなかった領域である。
しかしこの領域も関連性・連続性・発展性という系統性をもっている。
そして感覚や運動に基づく自発性の高い活動が子どもの内面生命の力を覚醒させ自然に発達を促す。
芸術領域は、自己活動、自己表現を核とするが、音楽は専門知識と技術が関連するため取り組みにくい領域である。
②新しい生命の科学との関連
脳科学の観点からもモンテッソーリ教育を解釈することができる。(第6章より)
(3)モンテッソーリ教育における「環境」の意義の再認識
モンテッソーリ教育の課題と役割を考えるとき「環境」は重視すべきキーワードである。
教具、教師、他の(異年齢の)子ども、スペース等教具以外の環境、広い外界の自然的、文化的、社会的環境である。
モンテッソーリ教育には環境を支える理念がある。
・大人の子どもへの権威が極力除かれるよう努めている
・子どもの生命の力を大切にしている
・子どもは大人と同じに一人の人間として尊重されている
・子どもの一人ひとり違う個性が認められ尊重される
・子どもは自由で主体的に生活できる
・子どもは一人ひとりの仕方で自分を育てる仕事をしている
・一人ひとりの今とともに未来における学びと未来の生を支える力が大切にされている
(4)実践の成果からのモンテッソーリ教育の再検証
本書で取り上げた高根学園・瑞穂子どもの家、野並保育園、障害児教育での実践などの成果を再検証してみる必要がある。
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本章は、第1章から第6章までを振り返り、モンテッソーリ教育の意義や今後の課題を示唆した内容となっています。
そして、モンテッソーリ教育が果たす教育への大きな役割を再認識させられる総まとめの章です。
本書の内容紹介は本章をもって終了します。